2018年度大学入試センター試験「地理B」 2018年1月13日実施 TOPへ
2018年度大学入試センター試験「地理B」は、出題傾向は昨年と大きく変わっていません。最後の2択で迷う問題が少なく、難易度は易化したと思います。また、国の比較の問題が、これまでの2カ国から3カ国になりました。
2年生のみなさんは、来年に向けて、教科書や資料集、地図帳で確認してください。
また、日頃からテレビ、新聞などで、世界の国々の現況に興味をもってください。
とりあえず、問題を解いてみて、ポイント、感想をアップしました。
間違いがありましたら、メールで教えてください。
センター試験の問題と解答は、こちらを参考にしてください。
過去のセンター試験「地理B」分析は、こちら
第1問(世界の自然環境と自然災害)
問1 世界の地形
① Aはパリ盆地で、ケスタがみられる。
② Bのドラケンスバーグ山脈は古期造山帯なので、活火山はみられない。→誤り
③ Cのデカン高原は、溶岩台地である。
④アンデス山脈のDはフィヨルドのすぐ北に位置するので、氷食地形がみられると想像できる。
問2 湖の成因は、頻出問題。レマン湖がアルプス山脈に位置し、死海が塩湖、パトス湖が海岸沿いであることが分かれば、組合せは決まる。
死海・・・塩湖→河川の終点→湖面標高が海面より低い→ウ
パトス湖・・・海岸沿い→ラグーン→湖面標高が海面とほぼ同じ→イ
レマン湖・・・アルプス山脈→氷食谷(U字谷)を流れる河川が堰き止められた氷河湖・湖面標高が他よりも高い→ア
問3 土壌の分布
①風化した火山岩(玄武岩・輝緑岩)からなる赤紫色の間帯土壌・・・テラローシャ(ブラジル高原・コーヒー栽培)
②風化した石灰岩からなる赤色の間帯土壌・・・テラロッサ(地中海沿岸・果樹栽培)
③腐食に乏しい灰白色の成帯土壌・・・ポドゾル(冷帯に分布)
④腐食に富む黒色の成帯土壌・・・チェルノーゼム(ウクライナ~西シベリア)→F
問4 植生の垂直分布
①ペルー、ボリビアのアンデス山脈東側斜面は、Cw、Awなので、「冬季の豊富な降水」は誤り。
②~④は正しいので、しっかり内容を理解すること。
問5 サヘルの砂漠化の進行
④過放牧・過耕作は砂漠化の進行を進めるので、「砂漠化の進行を抑制する」は誤り。
問6 エルニーニョ
文章と図を落ち着いて読めば、解答できる。
カ 低緯度地域→貿易風
キ 南アメリカ北西部から太平洋中部・・・高温多雨
北アメリカ南部・・・低温多雨
→洪水
第2問(資源と産業)
問1 ボーキサイト、リチウムの生産と国際特許出願件数→図の特徴を捉えよう
ア ギニア、ジャマイカ→ボーキサイトの生産量
イ 先進国→国際特許出願件数
ウ チリ、アルゼンチン→リチウムの生産量
問2 シリコンアイランドの工業立地・・・文章を理解すれば解答できる。
カ 「人件費が安価」→労働力志向型
キ 「半導体が製品として軽量」→生産費に占める輸送費の割合が小さい
※「シリコンロード」と称される東北地方の半導体関連工場の工業立地も同じ。
問3 産業地域の発展
①「技能をもつ職人や中小企業の集積」「繊維や機械などの業種」「市場に対応した多品種少量生産」
→第三のイタリア
②「大学や研究所から独立したベンチャー企業」「半導体やインターネット関連の新しい技術やサービス」
→シリコンヴァレー
③「炭田(ルール炭田)と結びついた鉄鋼業」「環境問題に対処する技術を生み出す企業が集積」
→ルール
④「輸出加工区」「金融センターや知識産業の拠点」
→シンガポール
問4 日本の自動車生産
日本の自動車メーカーの海外生産は、1982年の対米輸出規制をきっかけにアメリカでの現地生産が増えた。
海外生産はアジア地域でも拡大し、2006年にアジア地域が北アメリカを上回った。
2007年以降は、海外生産が国内生産を上回っている。
→ ①日本 ②アジア ③北アメリカ ④中央・南アメリカ
問5 科学技術の進展と農業の変化
遺伝子組み換え作物は、「自給的農業が盛んな国」ではなく、企業的穀物農業が盛んな国で導入が進んでいる。
問6 日本の産業の立地条件
情報関連サービス業・・・東京に集中→ス
道路貨物運送業・・・各地方の中心地に集積→サ
農業関連サービス業・・・東京、大阪の割合が小さい→シ
第3問 生活文化と都市
問1 ヨーロッパの国の宗教・宗派別人口割合
ギリシャ・・・ギリシャ正教→③(正教の割合が大きい)
ドイツ・・・北部・プロテスタント、南部・カトリック、トルコ系のイスラム教徒の存在
→②(カトリックとプロテスタントとの割合が同じ)
フランス・・・カトリックの割合が大きい、アルジェリア系のイスラム教徒の存在
→①(カトリック60.4%、イスラーム7.5%)
ポーランド・・・カトリック→④(カトリック92.2%)
問2 衣服と気候・風土
ア 「四角形の布の中央に頭の通る穴をあけた外衣」→ポンチョ→南アメリカの高山地域
イ 「横にスリットのある上衣とズボンの組合せ」→アオザイ→ベトナム→東南アジアの熱帯地域
ウ 「全身をこれらで覆うことで強い日差しから身を守る」→乾燥地域→西アジアの乾燥地域
問3 多民族国家マレーシア
マレーシアの民族構成・・・ブミプトラ(マレー系と先住民族)62%、中国系23%、インド系(タミル人)7%
経済力を持つ中国系住民とマレー系住民との格差を縮小させるためにブミプトラ政策を行っている。
ルックイーストは、日本、韓国をモデルにしたマレーシアの経済発展政策。
マレーシアの国語はマレー語で、イスラム教を国教としている。
カ→ブミプトラ キ→中国
問4 都市人口率と首位都市
一般的に、先進国は都市人口率が高く、発展途上国は低い。
②、④は、イタリア、カナダのどちらか。
国土の大部分が冷帯・寒帯のカナダのほうが都市に人口が集中するため、都市人口率の高い④がカナダ。
①、③は、インド、バングラデシュのどちらか。
インドは、大都市が複数あるので、首位都市の人口割合の大きい③がバングラデシュ。
『データブック オブ・ザ・ワールド2018』で確認すると
①インド 人口約13億人 ムンバイ約1200万人(広域約1800万人)→首位都市の人口割合 約0.9%(広域・約1.4%)
②イタリア 人口約6000万人 ローマ約290万人→首位都市の人口割合 約0.5%
③バングラデシュ 人口約1億6000万人 ダッカ約700万人(広域約1600万人)→首位都市の人口割合 約0.4%(広域・約10%)
④カナダ 人口約3600万人 トロント約280万人(広域約600万人)→首位都市の人口割合 約0.8%(広域・約16%)
問5 城下町の構造
旧城下は、商業の中心であったが衰退し、景観整備をし観光地化する→②→B
駅前地区は旧城下に代わって商業の中心となるが→③→C
その後幹線道路沿に商業地区が移る→④→D
住宅地は、郊外に開発される→①→A
問6 都市の年齢階級別人口構成
X 大都市圏の都心、オフィスビルや百貨店が立地
→単身者、昔からの居住者(高齢者)が多い→ス(年少人口の割合が小さい)
Y 大都市圏の郊外、戸建て住宅中心の住宅地
→子供を持つ世帯が多い→サ(年少人口の割合が大きい)
Z 大都市圏の外側、農村部→シ(老齢人口の割合が大きい)
第4問 西アジア
問1 西アジアの地形
ウ、エが標高の高い地域であり、アフガニスタン、パキスタン、インドの国境付近のエが「世界の屋根」と呼ばれている。
エ ティリチミール山(7,708m)・・・ヒンドゥークシュ山脈の最高峰→④
アのサウジアラビアは高原、イのイラク南部はメソポタミア平野、ウのイランのザグロス山脈の最高峰はザルド山(4548m)
問2 西アジアの農牧業
③ Cの地域は乾燥地域なので、コーヒーの栽培には適さない→適当でない
問3 西アジアの宗教
アラブ首長国連邦・・・イスラム教スンナ派の国 インド(ヒンドゥー教)、フィリピン(キリスト教)から外国人労働者→②
イスラエル・・・ユダヤ人(ユダヤ教)とアラブ系パレスチナ人(イスラム教)の対立→④
イラン・・・イスラム教シーア派を国教とする国→①
レバノン・・・7世紀にイスラム圏に入ったがキリスト教の影響が残るモザイク国家→③
問4 西アジアの経済指標
カ キプロス、イスラエル、サウジアラビア、クウェート、カタール、アラブ首長国が高位→人口一人当たりGNI
キ トルコ、キプロス、ヨルダン、イスラエル、アフガニスタンが低位→輸出額に占める石油・石油製品の割合
ク イスラエル、クウェート、カタール、アラブ首長国、オマーンが低位、アフガニスタンが高位→GDPに占める農林水産業の割合
問5 外国人観光客と航空便
観光地のトルコと巡礼地のサウジアラビアが、「外国からの年間訪問者数」が多いと考えられる。
日本からの直行便があるのはトルコで、①がトルコ、②がサウジアラビアになる。
残りの③と④については、政情不安のイラクの方が「外国からの年間訪問者数」が少なく、③がカタール、④がイラクとなる。
2018年1月現在
成田発イスタンブール(トルコ)便が毎日全日空とターキッシュ・エアラインズが1便ずつ(週14便)就航している。
成田発ドーハ(カタール)便が毎日日本航空とカタール航空が1便ずつ(週14便)就航している。
問6 西アジアの国際紛争
サ 2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件のことで、アフガニスタン紛争へと発展する。→Z
シ キプロス問題のこと。キプロスは、イギリスから1960年に「キプロス共和国」として独立。
南部のギリシャ系住民と北部のトルコ系住民は対立し、1983年北部トルコ系住民は「北キプロス・トルコ共和国」の独立宣言を採択。
2004年、キプロス共和国はEUに単独加盟。→X
ス 1990年イラク軍のクウェート侵攻のこと(湾岸危機)。湾岸戦争に発展。→Y
第5問 ノルウェー、スウェーデン、フィンランド
問1 地形と年較差
標高200m以下の割合 フィンランド>スウェーデン>フィンランド
年較差 ヘルシンキ(フィンランド)>ストックホルム(スウェーデン)>ベルゲン(ノルウェー)
ノルウェー、スウェーデン・・・スカンディナヴィア山脈
ベルゲン・・・暖流の沿岸
ノルウェー→ウ スウェーデン→イ フィンランド→ア
問2 発電量の構成比 ※下の統計資料は2014年
ノルウェーは水力発電の割合が大きい(水力96.0%)
スウェーデンは原子力の割合が大きい(水力41.6%、原子力42.2%)
フィンランドは水力発電の割合が小さい(水力19.7%、原子力34.6%、火力44.1%)
カ・・・原子力 キ・・・水力 ク・・・火力
問3 輸出の品目別割合と輸出相手国
ス・・・原材料と燃料の割合が大きい→北海油田があるノルウェー
サ・・・ロシアが輸出相手国3位→フィンランド
シ・・・スのノルウェーが輸出相手国1位→となりのスウェーデン
問4 ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの民族・言語
ネット上では「ムーミン」が話題になっておいるが、「ムーミン」がフィンランドの作品であることを知らなくても、以下のことを知っていれば解答できる。
ノルウェー、スウェーデン・・・ゲルマン系、プロテスタント→言語が同じ語族
フィンランド・・・フィン人(ウラル系)、プロテスタント
ノルウェー・・・バイキング
チの「小さなバイキングビッケ」・・・ノルウェー ⇒ タの「ムーミン」→フィンランド
A・・・スウェーデン語と似ている→ノルウェー ⇒ B→フィンランド
問5 ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの国民負担
OECD加盟国でヨーロッパの国々、特に北欧の国々は「GNIに対する租税負担率」、「GDPに対する公的社会支出の割合」が大きい。→②
2014年の「GNIに対する租税負担率」
デンマーク68.6% スウェーデン50.2% フィンランド45.2% ノルウェー37.3% 日本25.0%
詳しくは、財務省の国民負担率(対国民所得比)の国際比較(OECD加盟33カ国)を参考にしてください。
「GDPに対する公的社会支出の割合」は、
OECDの「1960 年、1990 年、2016 年の公的社会支出の対 GDP比」 を参考にしてください。
第6問 高山市の地域調査
問1 気温の年較差と日照時間
高山市・・・内陸→気温の年較差大きい→ウ
富山市・・・日本海側→冬季降雪→冬季の日照時間が短い→ア
浜松市・・・太平洋側→冬季乾燥→冬季の日照時間が長い→イ
問2 主題図(統計地図)の読図
③中心部は、隣接地域と比べて核家族世帯や単身世帯の割合が低いのではなく高い。→適当でない
問3 農林水産物の流通
交通網が整備される以前は、新鮮な状態で農産物を販売するために、域内消費を促していた。
海産物については、水揚げ地の富山で加工し内陸の高山まで運んだ。
高山まで運ばれた海産物は、同じ内陸の松本方面に運ばれた。
ブリ街道・・・富山~(越中ブリ)~高山~野麦峠(飛騨ブリ)~松本
富山~糸魚川(糸魚川ブリ)~松本
※塩の道・・・糸魚川~大町~松本
※鯖(サバ)街道・・・若狭国(福井県嶺南地方)~京都
問4 地形図読図
④幹線道路沿いに工業団地は見られない。→適当でない
注意 ②「七日町壱丁目」の横に北向きの矢印あるので、宮川は南から北へ流れている。
問5 資料の読み取り
近年、高山市を訪れる観光客は「日帰り客」が増えているが、「宿泊客」は1995年以降100万人以上を維持しているので、「通過型の観光地」としての性格が強いとは言えない。→③
問6 植生の垂直分布
高山帯・・・森林がみられない→A
亜高山帯・・・針葉樹林→C
山地帯・・・落葉広葉樹と針葉樹の混在→B