あぜっ地理(都市問題)

 

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1 都市人口率の推移

(1)都市人口率…都市部に居住する人口の比率

  都市の定義は、国によって違うので、単純に比較することはできない。

  都市人口率のデータは、「World Urbanization Prospects」で調べることができる。

(2)世界の都市人口率  Excelファイル

  世界の都市人口率は、1950年で約30%であったが、2015年で50%を超えている。

  アジア、アフリカで都市人口率が、低いことがわかる。

   

(3)主な国の都市人口率 Excelファイル

  都市人口率は、先進国で高く、発展途上国で低い。

  経済成長とともに、都市人口率は高く推移する。

  イギリスやオーストラリアは、早くから都市人口率が高く推移している。

  日本は、平成の大合併により都市人口率が90%を超えている。

   ※日本の都市の定義は、行政区の「市」を都市の定義としているためである。

   

2 先進国の都市問題

(1)「pull型」人口流入

  雇用機会が大きくなった都市は、農村地域や都市周辺部から人口を吸引(pull)する。

(2)ドーナツ化現象

  都心部の人口が減少し、都市周辺部の人口が増加する現象。

   都市の過密、地価高騰、交通渋滞、大気汚染など都市公害

    →良い環境を求めて都市郊外へ人口が流出

(3)スプロール現象

  都市郊外が、無秩序・無計画に開発され、虫食い状に都市が発展する現象。

  ※大ロンドン計画…グリーンベルト(緑地帯)を建設し、無秩序な都市の拡大をおさえた。

           →グリーンベルトの外側に職住近接型のニュータウンを建設

           →ロンドンに集中する人口と産業を分散

            ※日本のニュータウンは、住宅機能に特化した「ベッドタウン」

(4)インナーシティ問題

  都心付近の古くからの市街地(インナーシティ)が、荒廃すること。

   建物の老朽化や環境悪化の都心部の旧市街地(インナーシティ)から、富裕層は都市郊外に流出

    →家賃が下がった老朽化した住宅に、低所得層や外国人労働者が流入

     →スラムの形成、失業率の上昇、居住環境の悪化

(5)セグリゲーション

  都市内部で、人種や民族、所得階層ごとに居住地の分離が進む現象。

  (例)アメリカの都市

    都心付近の旧市街地(インナーシティ)…ヒスパニックやアフリカ系黒人

    都市郊外…白人を中心とする富裕層

(6)ジェントリフィケーション

  都心付近の旧市街地(インナーシティ)を、新オフィスや高級住宅街につくりかえる再開発

   →富裕層の流入、地価・家賃の上昇

   →これまで住んでいた人が住めなくなる新たな問題も発生

(7)ウォーターフロントの再開発

  産業構造の転換、海運業の需要低下

   →工場や倉庫などの跡地を再開発

     →オフィスビル、高層マンション、ショッピングセンター、レジャー施設

  (例)ドックランズ(イギリス)、ハーバーランド(神戸)、みなとみらい21(横浜)

(8)都市景観

  ヨーロッパ…都心部に歴史的建造物が多く見られ、高層ビルは都市の郊外に見られる。

        →パリの高層ビル群は、郊外のラ・デファンス地区(副都心)に見られる。

  北アメリカ…老朽化した建造物を取り壊して高層ビルを建設するので、都市の中心部に高層ビル群が見られる。

(9)クローン・タウン化…一橋大学・2021年度入試で出題

   イギリスでは、主要な商業地区が大規模なチェーン店ばかりで占められているような街を特性が失われた“クローンタウン”と呼称して、地域性の喪失に警鐘をならす動きがある。

3 発展途上国の都市問題

(1)「push型」人口流入

   農村地域で人口爆発が起こり、余剰人口が就業機会を求めて、都市に押し出され(push)、都市に人口が流入する。

(2)プライメートシティ(首位都市)

  人口が突出している大都市

  発展途上国では、人口1位の都市が人口2位以下の都市に比べて圧倒的に人口が多くなる傾向が見られる。

   →発展途上国では、政治、経済、文化機能だけでなく、自国・外国の投資が一つの都市に集中する。

  アフガニスタン…カブール(382万人) ヘラート(49万人) 2016年

  エチオピア…アディスアベバ(310万人) メケレ(27万人) 2013年

  メキシコ…メキシコシティ(2150万人) グアダラハラ(485万人) 2016年 都市域人口

  ペルー…リマ(1004万人) アレキパ(88万人) 2016年

   『データブック オブ・ザ・ワールド2021』より

(3)急激な人口増加と都市問題

  急激な人口増加→道路、上下水道、電気などの社会資本の整備が追いつかない。

         →交通渋滞、大気汚染

         →住宅不足によるスラムの拡大

  ※発展途上国のスラムは、都市の周辺部に形成される。

(4)インフォーマルセクター(informal sector)

  行政の指導下に置かれていない経済活動で、路上での物売りや靴磨きなどがこれにあたる。

   →スラムで生活する多くの人々は、インフォーマルセクターと呼ばれる不安定な就労で生計を立てている。

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